C++ ベクトルとは:基本概念と特徴
動的配列として機能するvectorの仕組み
C++のvectorは、STL(Standard Template Library)が提供する最も基本的で汎用性の高いコンテナの一つです。その本質は「動的な配列」にあり、以下のような特徴を持っています:
#include <vector> using namespace std; // vectorの基本的な宣言と初期化 vector<int> numbers; // 空のベクター vector<int> initialized = {1, 2, 3}; // 初期値付きベクター vector<int> sized(5); // サイズ5で初期化(全要素が0) vector<int> repeated(3, 10); // 3個の10で初期化
メモリ管理の特徴
- 自動的なメモリ管理
- 要素の追加に応じて自動的にメモリを確保
- 内部でメモリの再割り当てを管理
- メモリリークの心配が少ない
- 連続したメモリ領域
- 高速なランダムアクセスが可能
- キャッシュフレンドリーな設計
通常の配列と比較したvectorの利点
1. サイズの動的な変更
従来の配列との最大の違いは、実行時にサイズを変更できる点です:
// 従来の配列 int static_array[5] = {1, 2, 3, 4, 5}; // サイズの変更は不可能 // vector vector<int> dynamic_vector = {1, 2, 3, 4, 5}; dynamic_vector.push_back(6); // 要素の追加が可能 dynamic_vector.pop_back(); // 要素の削除も可能
2. 安全性と利便性
vectorは多くの安全機能と便利な機能を提供します:
- 境界チェック:at()メソッドによる安全なアクセス
- サイズ管理:size()メソッドで現在のサイズを取得可能
- イテレータ:範囲ベースのfor文との相性が良い
3. STLアルゴリズムとの統合
#include <algorithm> vector<int> v = {4, 2, 5, 1, 3}; sort(v.begin(), v.end()); // 簡単にソートが可能
性能比較表
機能 | 通常の配列 | vector |
---|---|---|
メモリ管理 | 手動 | 自動 |
サイズ変更 | 不可 | 可能 |
境界チェック | なし | あり(at()使用時) |
STLアルゴリズム対応 | 限定的 | 完全対応 |
メモリ効率 | 固定 | やや低い(余分な容量確保) |
アクセス速度 | 最速 | ほぼ同等 |
vectorは現代のC++プログラミングにおいて最も重要なコンテナの一つとして位置づけられています。その柔軟性と使いやすさは、少しのパフォーマンスオーバーヘッドと引き換えに、より安全で保守性の高いコードの作成を可能にします。